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日本と中国における地域福祉を推進する組織に関する基礎研究-地域福祉推進委員会と社区発展治理委員会の比較を中心に
著者:魏 小玉・尹 文九
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p147-162
2022年07月31日発行
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少子高齢化が進行し、地域は高齢者、障害者、児童などの社会福祉サービスの主要な担い手となった。また、地域福祉という言葉が社会福祉の領域で次第に一般的に使われるようになった。日本と中国において、国家レベルでの福祉を推進するための具体的な政策や制度は異なっているが、これは地域福祉の場合もあてはまる。つまり、日中両国において、住民の福祉を実現するための目標に向けた地域の組織化や福祉サービスの供給、住民の参加方法などが異なるからである。こうしたことを踏まえ、本研究では地域福祉の概念に従い、日中両国における地域福祉を推進する組織の比較分析を行った。結果として、日本の地域福祉推進委員会と中国の社区発展治理委員会は同じ目的として設置されているが、業務内容及び役割において相違点と類似点が見られた。相違点は主に、1)組織の性格、2)設置場所、3)業務範囲、4)構成員、の4 点であり、類似点は主に、1)設置地域、2)役割、の2点である。
外国人介護福祉士の活用と定着に関する研究-スコーピングレビューの結果から
著者:王 翰博
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p129-146
2022年07月31日発行
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背景:日本における介護人材の不足を解決するために、介護福祉士国家資格を取得した外国人の受入れは今後も拡大される見込みである。しかし、外国人資格取得者の活用や定着に言及する文献は乏しい。本研究はEPA介護福祉士または在留資格「介護」取得者のニーズや政策的課題を明らかにするために、計16報の文献をスコーピングレビューした。結果:介護福祉士取得者は未取得者に比べて就業が不利になる場合もある、資格取得後の目標を喪失しやすい、取得者を帰国に追い込んだ要因は取得者が離職・転職する要因とは違うことが明らかとなった。結論:取得者と未取得者の間に処遇の格差を設けること、取得者に新たなキャリア目標を形成させること、施設系では職場環境の改善、訪問系では処遇の改善をすることの必要が示唆された。
子どもと保護者を支える放課後児童クラブの働きと現状の課題に関する一考察
著者:関 容子
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p119-128
2022年07月31日発行
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女性の就業率の上昇やひとり親家庭の増大にともない、放課後児童クラブに入所できず、働くことを断念する保護者がいる。平成26年(2014)に厚生労働省と文部科学省の連携のもと「放課後子ども総合プラン」が策定され、厚生労働省が行う「放課後児童クラブ」と文部科学省が行う「放課後子供教室」の一体的な実施が進められてきた。待機児童の早期解消や、全ての児童の安心・安全な居場所の確保を図るべく、2019年度から「新・放課後子ども総合プラン」が実施されている。しかし「生活の場」と「学習・体験活動の場」の役割の異なる事業の一体型には、子どもや保護者が必要とする支援が整えられる必要がある。2020年には新型コロナウイルス感染症蔓延防止のため、小学校における一斉臨時休業や分散登校が実施され「放課後児童クラブ」の働きは、子育て家庭にとってこれまで以上に重要なものとなっている。すべての児童の安全・安心な居場所の確保と、子どもの最善の利益につながる支援の実現には、関係省庁の縦割り行政の他、専門的な知識および技術を備えた職員の配置や施設の安定的な運営、保護者の収入による影響等、未だ多くの課題がある。そこで、本論文では、放課後児童クラブに関わる現状と課題について、具体的に問題提起した。
日韓の認知症高齢者を対象としたアートセラピーの先行研究レビューに関する研究
著者:洪 利炅
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p101-118
2022年07月31日発行
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目的:日韓の認知症高齢者を対象としたアートセラピー研究の文献レビューを行い、日韓の研究動向を明らかにした。研究方法:日韓ともに「認知症」、「アートセラピー」、「介入」をキーワードとし、2012年から2021年までの9年間の原著論文のWeb 検索を行った。その結果、日本の論文が3 編と韓国の論文が14編の計17編が集計された。結果:アートセラピーの介入効果があった先行研究は、日本の研究が2編、韓国の研究が13編であり、介入効果が部分的にあった先行研究は韓国の研究が1編、介入効果がなかった先行研究は日本の研究が1編であった。その介入効果を評価する主な尺度として日韓ともに認知機能の尺度であるMMSEが用いられた。結論:日韓ともにアートセラピーの介入効果は、認知機能の評価が多いが、韓国に比べて日本の先行研究は少ない。今後日本において高齢者の認知症予防や改善のためには認知症高齢者を対象としたアートセラピーの効果についてさらなる研究が必要である。
中国人留学生の生活課題とその対処法に関する考察-ケイパビリティ・アプローチの視点から-
著者:李 亭
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p83-100
2022年07月31日発行
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日本政府は、国際化を目指すため積極的に優秀な外国人留学生の招致を行っている。だが、外国人留学生を数多く受け入れている一方で、質的な面における受け入れ体制は十分に整っていないようである。こうした状況下にあって、外国人留学生が日本社会に定着することは容易ではない。そこで、本研究では、外国人留学生の最大グループである中国出身留学生を対象に、ケイパビリティ・アプローチに着目し、中国人留学生が抱えている生活課題とその対処法についてインタビュー調査を行った。本研究が数ある理論のなかでもケイパビリティ・アプローチを取り上げる理由は、同アプローチが他ならぬ「個人の実質的自由」と「能力の豊かさ」の観点から、中国人留学生の生活課題と対処法を多角的に評価することができる数少ない理論の一つだと考えられるからである。最終的に彼らが日本社会で定着して活躍するための示唆を導くことを目指す。
中高年者のペット世話は死亡リスクに対して抑制効果があるのか―群馬県における16年間の追跡調査から―
著者:金 貞任・鈴木 路子
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第12巻(2022.7)p69-82
2022年07月31日発行
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本研究では、ペット世話が中高年者の死亡リスクに対して抑制効果があるのかを16年間の追跡調査により究明することを目的とした。調査対象者は、群馬県のH市とI村の40歳以上69歳の者であり、1993年から2008年までの間に転出者を除外し、単身世帯と夫婦のみ世帯に限定し、2,523名が分析と対象となった。Cox比例ハザードモデルに基づく多変量解析により、死亡リスクの低下には、ペット世話がある群の女性がペット世話を頻度にすることが有効であった。ペット世話がない夫婦のみ世帯に比べ、ペット世話がない単独世帯の男女はともに、死亡リスクが高いという結果となった。ペット世話がある群の男女に比べ、ペット世話がない群の男女はともに攻撃的であるとそれぞれ死亡リスクが低いことが認められた。高齢者の夫婦のみ世帯よりも単身世帯が急速に増えていく日本において、中高年者の死亡リスクの抑制には、ペット世話の重要性が示唆された。
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